【産婦人科医コラム】若い女性の隠れ貧血2018.08.03
「健康診断で貧血と診断されたことはないから大丈夫」と安心しているあなた、でも油断は禁物です。
若い女性の3人に1人が、健康診断の数値には表れない「隠れ貧血」といわれています。
様々な不調を引き起こす貧血の主な原因は鉄分不足。
今は不調だと気付いていない人も鉄分不足の可能性があるので注意が必要です。
一般的な「貧血」とは?
一般的な貧血は血液検査のヘモグロビンの値で判断します。
女性の場合、ヘモグロビン値12g/dl以下が貧血とされ、鉄剤などが処方される対象となります。
ヘモグロビンは酸素をカラダの隅々まで運ぶ役割を持っており、ヘモグロビンが不足するとカラダが酸素欠乏状態になって、めまいや立ちくらみ、頭痛、動悸、息切れ、意欲の低下、食欲不振、疲れやすさ、冷え性など様々な不調が現れます。
ヘモグロビンをつくるには鉄分が必要です。そのため、貧血の中で最も多いのが鉄欠乏性貧血です。
「隠れ貧血」とは?
「私のヘモグロビン値は12g/dl以上だから貧血ではない」、そういうあなたも影で貧血が進行している場合があるのです。
体内の鉄は優先的にヘモグロビンをつくることに回され、余った鉄はフェリチンという“鉄貯蔵庫”に入ります。
カラダの中で鉄不足がおこると、まずこの貯蔵庫から先に鉄を使うため、ヘモグロビン値は正常でもフェリチン値が低いという現象がおこるのです。
これが「隠れ貧血」です。女性の場合毎月月経があるために、失う鉄分は男性の約2倍です。「隠れ貧血」が良くなると、女性の不調の多くが改善されると言われています。
フェリチンの基準値の幅は広く、基準値内だからと言って安心はできません。
月経のある女性の場合、フェリチン値80ng/ml以上を目指したいところ。
これから妊娠を望むのであれば、最低でも30ng/ml以上は維持してほしいのですが、残念ながら女性の6割は30ng/ml以下というのが現実です。
隠れ貧血が心配な人は、貯蔵鉄の値を調べる「フェリチン検査」を受けることをおすすめします。
鉄分は体内でつくることができない
鉄は体内でつくることができないため、食事から摂るしかありません。
しかし鉄分の体内への吸収率は非常に低く、日常の食事から10-15mgの鉄分を摂っても、体内にはわずか1mg程度しか吸収されません。
尿・便・汗で日々1mgの鉄分が排出されるのに加え、月経による鉄の喪失量を考えると、1日あたり約2mgを失っている計算になります。
女性の場合、1日2mg以上の鉄分を吸収しないと、じわじわと貧血が悪化していくことになります。
貧血を改善するには
1. 食事やサプリメントで摂取
鉄分を摂るには、食事で摂取するのが第一。
貧血の予防の基本はきちんとした食生活を送ることです。
一般的な女性の1日の鉄摂取推奨量は10.5mgですが摂れていない人が多いようです。
鉄分の多い食材は豚レバー、あさり、卵黄、納豆、牛ヒレ肉、カツオのたたきなどです。
また、市販のサプリメントでも鉄分補給が可能です。
2. 鉄剤を処方してもらう
医療機関を受診すると経口鉄剤を処方してもらえます。
これは、鉄分を多く含有していますが吸収率が悪いという点があります。
また「飲んだあと気持ちが悪くなる」「便秘になる」などの症状を訴える人もいます。
タンニンを含む食品と併用すると鉄剤の吸収が悪くなるので、緑茶や紅茶で飲まないように注意してください。
3. 月経の改善
鉄分の摂取量に比べて月経量が多すぎると、貧血になってしまうことがあります。
婦人科で出血量が多くなる子宮筋腫や内膜症などがないか定期的なチェックを行いましょう。
避妊や月経困難症に使う低用量ピルには月経量を減らす効果もあるので、貧血の人は試してみるのも良いでしょう。
最近の低用量ピルは、太ったり気持ち悪くなったりする副作用はほとんどなく、月経日の移動も簡単にでき、ニキビや子宮内膜症の改善予防にもなり、生活の質の改善に非常に効果的です。
佐藤雄一
産科婦人科舘出張 佐藤病院
女性へのメッセージ
妊娠中の健康管理・分娩を含む周産期医療とともに、不妊症・子宮内膜症の治療や、患者さまの体への負担が少ない腹腔鏡手術に積極的に取り組むほか、予防医学の観点から健康と美をサポートするプレコンセプションケアに力を入れています。産婦人科専門病院として、女性の生涯に渡る相談役として、思春期から更年期まで幅広い相談治療に従事しています。