【産婦人科医コラム】「澤穂希さんも飲んでいた低用量ピル」~女性アスリートの健康~2018.10.05
元サッカー日本代表の澤穂希さんは、若いときから低用量ピルを使って月経周期をコントロールし健康管理をしていたといいます。
彼女は現役引退後すみやかに妊娠出産しました。
低用量ピルはアスリートのパフォーマンス向上に貢献し、競技生活全般を改善するのに役立ちます。
アスリートに限らず一般女性の健康という面からみても、低用量ピルは大きなメリットを持っています。
低用量ピルには避妊以外の効果もある
低用量ピルを飲むと避妊効果がありますが、その他に次に述べるような作用を持っています。
低用量ピルのメリット
低用量ピルを内服すると、
- 月経痛がやわらぐ
- 月経の量が減る
- それに伴って貧血が治る
- 月経周期を自由に調節できる
- 排卵痛がなくなる
- 月経前症候群の症状緩和
- 排卵時出血がなくなる
などのメリットがあります。
このように低用量ピルの使用は、アスリートの競技生活を快適なものにしますし、成績を上げることに大いに貢献するはずです。
アスリートが飲むとき気を付けること
1)体重増加
最も心配な点でしょうが、低用量ピルによる体重増加は認められないことが明らかにされています。
ただし服薬初期には食欲の増加やむくみなどにより一時的に体重が増加する場合もあるので、目的とする試合の2-3か月前から服用開始しておくとよいでしょう。
2)不正出血
不正出血がみられることもありますが、服用を続けると次第に減少するため継続して飲むようにしましょう。
不正出血が続く場合は他の低用量ピルに変更してみることを相談してください。
3)手術を受けるとき
アスリートは外傷による手術や保存療法を受ける機会が多いです。
30分を超える手術では、下で述べる静脈血栓症を防ぐため、手術の4週間前から低用量ピルを中止することが推奨されています。
手術を受ける際には、担当医に低用量ピルを服用していることを必ず話すようにして下さい。
また、遠征での長時間のフライトは静脈血栓症のリスクを増加させます(エコノミークラス症候群と同じ)。
フライト中は水分を十分に摂取することや、座ったままでの足の運動をするとよいでしょう。
4)運動パフォーマンス
低用量ピルの使用が競技のパフォーマンスを落とすのではないかと懸念する向きも見られます。
しかし実験データでは酸素取り込みや呼吸数パフォーマンスに低用量ピルは影響を与えなかったという報告があり、この点は問題はないと考えてよいでしょう。
5)ドーピング
現在日本で処方される低用量ピルはドーピング禁止物質ではありません。
安心して内服できます。
ジュニアアスリートは飲めるの?
基本的に低用量ピルは初経(初めての月経)があれば飲むことができるとされています。
また、低用量ピルによって身長の伸びを妨げることはありません。
*文中の記載内容には薬剤の適応外使用が含まれます。
*薬剤を使用する際には主治医の判断に従ってください。
甲村弘子
医療法人フラウエンこうむら女性クリニック
女性へのメッセージ
女性ホルモンの異常からくる月経不順や、不妊症、更年期障害など内分泌に関わる疾患を専門としています。これまで大学病院、総合病院で長年にわたり産婦人科診療に従事した経験を踏まえて、女性の悩みに幅広く対応いたします。来院される患者様のからだの症状ばかりでなく、心の悩みにも耳を傾けて十分にお話を伺います。そのうえで適切な対応をともに考えるような医療を行っていきます。一生を通じた「女性の健康の担い手」として、気軽に相談できる産婦人科診療を行うことがモットーです。