【産婦人科医コラム】産後うつ病2019.06.28
出産後の女性の変化
妊娠・出産といった大きいライフイベントの後の産後は、ホルモンの変動に加え、育児・家事の負担や寝不足といったいろんなストレスで、身体的にもメンタル的にも変調をきたしやすい時期でもあります。
さらに子育てや仕事との両立の不安、核家族化による孤独感などの個人的な要因も加わってくると、ライフスタイルも変わり、うつ状態になりやすいので注意が必要です。
マタニティーブルーズと産後うつ
産後2~10日目に一時的に現れる以下のような情緒不安定な症状を、マタニティーブルーズとよびます。
- 体がだるい
- 気分が落ち込む
- 眠れない
- 不安感・焦燥感がある
- 食欲不振
- 涙もろくなる
- 気力が低下する
- 赤ちゃんがかわいいと思えない
一時的な反応で数日中に自然と消失してしまうマタニティブルーズは治療の必要性はありませんが、この一部が慢性化して移行し、症状が2週間以上継続し、他の精神疾患が否定されたものを産後うつ病と呼びます。
産後1ヵ月から半年にかけて出やすく、産後の女性の10~15%に産後うつ病が発症すると言われています。
産後うつ病にかかりやすい要因
産後うつ病にかかりやすい要因としては、以下のようなものがあります。
- 初めての出産である
(初産婦の25%が産後2週時点でうつ状態の可能性があると判定されたとの報告があります) - 出産前に精神病を患っていた
- 予期しない妊娠であった
- パートナー・家族の理解がない
- 将来に不安がある
また、厚生労働省の研究班の調査で、2015年から2016年の2年間で産後1年までに自殺した妊産婦は全国で少なくとも102人で、そのうちの92人が出産後であったと発表しています。
産後うつ病への取り組みが始まっています
産後うつ病などの不安定な精神状態は、母体だけでなく、育児困難や虐待にも関連することから、2017年度から自治体による産後検診で産後2週目と1ヵ月目にうつ病の検査を行うようになり、必要な場合には積極的に支援の取り組みを行っています。
産後うつ病の予防のために
産後うつ病の予防のためには、以下のようなことに気をつけてみてください。
- 何もかもすべて自分でやろうとしない
(パートナーや家族、友人などの協力を求めることをためらわない) - できるだけ睡眠を取って体を休め、リフレッシュする
(家事代行サービスや産院に併設されている産後ケアハウスなどを活用する) - 産後は精神的に不安定になりやすいことを、本人も周囲の人も理解しておく
不安なときは、かかりつけの医師、助産師、看護師、地区の保健センターの保健師やスタッフなどに相談することをお勧めします。
各自治体での妊娠期・子育て期の支援センターも設置されていますので、それらも利用して、一人で悩んだりしないようにしましょう。
天神尚子
医療法人社団テンジン 三鷹レディースクリニック
女性へのメッセージ
現在は女性を取りまく環境にも大きな変化がみられ、女性が社会に進出し、女性の力が求められる時代ですが、その環境はまだまだ満足できるものではありません。一方私たち女性は思春期から更年期まで個人差も大きいですが女性ホルモンの変化によるいろいろな変化が身体に生じます。そして、そこでは心身のアンバランスも生じやすくなります。充実した快適な毎日を過ごすためには自分の身体を理解した上での正しい健康管理をすることが大切だと考えます。気になることがあれば、気軽に相談にいらして下さい。