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疲れたからといって、甘いものに頼りすぎりのもよくないって本当?2019.10.23

疲れたからといって、甘いものに頼りすぎりのもよくないって本当?

疲れたときには甘いものを、というのは昔からよく言われています。

しかし、近年では甘いものは太る、生活習慣病の原因となる、といった悪いイメージがあり、糖分そのものが悪いのではないかというイメージを抱く人が増えています。

疲れたときに甘いものを摂るのは、本当は良くないのでしょうか?

この記事では、疲れたときに甘いものと言われてきた理由や、甘いものの摂り方などについてお話します。

疲れてくると甘いものが食べたくなるのはどうして?

仕事やスポーツなどで頭や体が疲れると、私たちは甘いものが欲しくなります。

これは、脳や体が失ったエネルギーを早く取り戻そうとしているのです。

体や頭がエネルギーを大量に消費すると、肝臓に蓄積されていた糖分エネルギー「グリコーゲン」がなくなり、血液に糖分を補給できなくなります。

すると、血液中の糖分濃度(血糖値)が下がります。

血液は体中に酸素と栄養分を運んでいますが、血糖値が下がると糖分を分解して得たエネルギー「ブドウ糖」を体中に運べなくなり、脳や体の組織に十分なエネルギーが来なくなります。

すると、まずブドウ糖だけをエネルギー源としている脳が十分に働かなくなり、思考力や集中力が低下します。

さらに血糖値の低下が続くと、最終的には動くのもだるいような疲労状態となってしまいます。

こうした状態になるのを防ぐため、血糖値が低下すると甘いものが欲しくなるのです。

甘くない食品や糖質を含まない食品からエネルギーの摂取ができないわけではありませんが、他の食品は食べてから分解され、体内に吸収され、そこからエネルギーとして利用できるようになるまでに時間がかかります。

一方、糖分とそこから分解されてできるブドウ糖や果糖はすぐに吸収されます。

特にブドウ糖はすぐに血液に入り、わずか数分で血糖値を回復させ、全身の臓器にエネルギーを供給することができるのです。

たとえば、衰弱した状態の患者さんを病院に連れて行くと、まず真っ先にブドウ糖の点滴を行います。

これは、危険な状態から急いで回復させるためです。

また、日常生活で「3時のおやつ」が残っているのは、1日の生活の中でちょうどそのぐらいの時間が疲労を感じ始めるころだからです。

3時ごろに糖分を補給して疲労を回復し、寝るまでの間の活動時間を確保する、という意味で非常に合理的な習慣だと言えます。

そして、車を長時間運転していると、気がつかない間に注意力が鈍ったり、事故につながるような危険な状態になったりすることがあります。

これも運転による血糖値の低下と、それに伴う脳のエネルギー不足、判断力や集中力の低下が原因です。

フランスでは、「角砂糖とキャンディで安全運転を」という標語があるくらい、運転中の血糖値の低下は事故につながりやすいのです。

ぜひ、パーキングエリアなどで休憩する際には甘い物を忘れないようにしましょう。

糖分は太る、生活習慣病を招く、などの悪いイメージから、摂取しないようにしようとする人は多いです。

しかし、あまりに気にしすぎて過剰に摂取制限すると、血糖値が下がりすぎて脳や体に悪影響を及ぼすこともあります。どんな食品でも、適度な摂取が大切なのです。

甘いものを食べると体内でどんな変化が起きているの?

疲れたときに甘いものを食べると疲労が回復する、というのは広く知られていることですが、同時にほっとする、甘いものを食べると幸せを感じる、という経験を持つ人も少なくありません。

これは、甘いものを食べると脳内で「セロトニン」という別名「幸せホルモン」とも呼ばれる、精神を安定させるホルモンが増えているからと言われています。

脳内には神経細胞がたくさんあり、その細胞同士がたくさんの情報をやりとりすることで記憶や思考、感情などが処理されています。

このやりとりを司るのが「神経伝達物質」と呼ばれるホルモンたちです。

やる気を高める「ノルアドレナリン」、元気で活発に活動できる「ドーパミン」、気分を落ち着かせる「GABA」などがよく知られています。

こうした神経伝達物質がひとつに偏らず、バランスよく存在していると、適度に落ち着いた前向きな状態で過ごすことができます。

この神経伝達物質は「アミノ酸」「ビタミン」「ミネラル」などから作られますが、アミノ酸にはたくさんの種類があり、セロトニンの材料は「トリプトファン」というアミノ酸です。

甘いものを食べるとこの「トリプトファン」が優先的に脳内に届けられ、結果、セロトニンが多く作られて幸せを感じると言われています。

疲労回復に甘いものを食べるのは逆効果って本当?

疲労回復に甘いものが有効なことは初めにお話しましたが、かといってどんどん食べれば良いというものではありません。

甘いものを摂りすぎると、今度は血糖値が上がりすぎてしまい、血糖値を下げる「インスリン」というホルモンが大量に分泌されます。

その結果、次に急激に血糖値が下がってしまい、結局、体の疲労感や集中力・思考力が低下した状態に戻ってしまうのです。

さらに、こうしたジェットコースターのような血糖値上昇と低下を繰り返していると、やがて血糖値を下げるための「インスリン」の分泌が正常に行えなくなってしまいます。

インスリンは膵臓で作られ、分泌されるホルモンですが、その膵臓が疲れてしまい、正常なホルモン分泌ができなくなってしまうのです。

つまり、運動後や運転後、活動後の疲労回復として甘いものを食べるのは間違ってはいないのですが、毎回大量に摂取し続けてはいけない、ということです。

疲労回復に効果的な食べ方は?

では、疲労回復のために甘いものを食べる場合、どのように食べれば効果的で、かつ体に悪影響を及ぼさないようにできるのでしょうか。

血糖値の急激な上昇を防ぐ方法のひとつに「ゆっくり食べる」ことがあります。

飴を噛まずにゆっくり舐める、チョコレートを一粒二粒ゆっくり味わいながら食べる、というように時間をかけて食べることを意識するのです。

そうすると体内に入る絶対量が少なくなりますから、ブドウ糖の吸収もゆっくりになり、結果、血糖値の上昇も緩やかになります。

血糖値が急激に上がらなければ、インスリンの分泌量も少なくて済みますから、一気に血糖値が下がることもありません。

また、食べる甘いものの種類を果物にするという方法もあります。

血糖値の上がりやすさを示した指標にGI値(グリセミック・インデックス値)というものがありますが、ほとんどの果物はGI値が低いのです。

さらに、自然な甘みなので十分な満足感も得られます。みかんやりんごなど、昔から日本に馴染みのある果物は特におすすめです。

パイナップル・スイカなどは果物の中ではGI値が高めですが、焼き菓子や菓子パンを食べるよりはずっと低いです。

また、無添加のドライフルーツなども良いでしょう。

ただし、ドライフルーツの中には砂糖や油を使ったものもありますので、無添加のものを選びましょう。

また、そもそも疲労回復のためにどんどんエネルギーとして糖質を利用しやすくするために、「クエン酸と一緒に摂取する」という方法もあります。

体内のエネルギー代謝経路である「クエン酸回路」を活性化させると、エネルギーを効率よく作れるので、細胞の修復を早めて疲労回復に役立ちます。

クエン酸は梅干し・レモン・お酢などに含まれていますので、レモンのハチミツ漬けやハチミツレモンドリンクなどにすると良いでしょう。

精神的な疲労を和らげるためには、アミノ酸の一種「GABA」を含むものを摂取すると良いでしょう。

興奮した神経を落ち着かせ、リラックスさせる働きがあるGABAは、デスクワークや集中した作業によってストレスのかかりやすい人にとくにおすすめです。

 

おわりに:疲れたときに甘いものは間違いではないが、摂りすぎに注意を

「疲れたときに甘いもの」これは、間違いではありません。

特に、脳はブドウ糖を主なエネルギー源として利用しているため、脳が強く疲労したときにブドウ糖を欲しくなるのは当たり前のことなのです。

しかし、食べすぎてはいけません。甘いものを一気に食べ過ぎると急激に血糖値が上がり、インスリンが分泌され、急激に血糖値が下がります。

ゆっくり食べる、GI値の低いものを食べるなどして、上手に甘いものを食べましょう。

(medicommi 2019年8月12日)

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