免疫低下を防いで免疫機能を保つためには、どんな対策が必要?2021.05.06
免疫は、感染症をはじめ、さまざまな病気から私たちの体を守ってくれる大切な機能です。新型コロナウイルスの流行の影響あり、免疫が低下しないように普段から気をつけている人も多いと思います。
今回は、免疫の働きや免疫低下の原因、免疫機能を維持する対策について詳しく解説していきます。
感染症から体を守る免疫ってどんなシステムなの?
免疫とは、病気の原因微生物(細菌やウイルス、カビなど)やがん細胞など、「体に害をもたらすもの」から私たちの体を守る仕組みのことです。免疫機能を維持することは細菌やウイルスへの抵抗力を高めることになり、さまざまな病気にかかりにくくなります。
免疫には自然免疫と獲得免疫があります。自然免疫は、もともと備わっている免疫機能であり、体に害があるものを記憶・認識して攻撃することで体を守っています。獲得免疫は、過去にかかった病気の原因になる有害物質と戦った経験の記憶から抗体を作って攻撃する免疫機能です(過去にかかった病気の原因微生物を記憶することを免疫記憶といいます)。
免疫機能が低下して「体を守る働き」がうまく機能しなくなると、感染症やがんなどの病気にかかりやすくなり、状態も悪化しやすくなります。
免疫機能が低下するのはどんなとき?
感染症を予防するには、手洗いやうがいなどで原因微生物の侵入を防ぎ、免疫機能を正常に保つことが大切です。免疫機能の低下は、以下がきっかけで起こりやすくなります。
- 加齢
- 体や心の疲労
- 環境の変化による自律神経の乱れ
- ストレス
- 睡眠不足や睡眠の質の低下
- 食生活の乱れ、栄養不足や栄養バランスの偏り
- 運動不足
- 喫煙
- お酒の飲みすぎ
- 風邪やアレルギー症状、脱水などによる体調不良
- 糖尿病やHIV感染症など、免疫低下を引き起こす持病
- 抗がん剤や免疫抑制薬、ステロイド薬など、免疫を低下させる薬の使用
病気や薬による免疫低下は担当医と相談しながら対処する必要がありますが、食事、ストレス、睡眠、運動などの「生活習慣」に由来するものに関しては、生活習慣の改善である程度の対策が可能です。また、誰にでも起きる「加齢による免疫低下」も生活習慣の改善である程度くいとめることができるといわれています。
加齢による免疫低下で起こる体の変化
加齢は身体機能の低下とともに、以下のように免疫細胞の機能も低下させます。
- 外敵と自己細胞を区別する機能が低下する
- 原因微生物に反応してつくられるタンパク質の量が少なくなる
- 免疫記憶の機能が低下し、新しい抗原の記憶ができなくなる
- 過去に記憶した抗原に遭遇しても、すばやい反応ができなくなる
- がん細胞を破壊する速度が遅くなる
このような変化により、高齢者は感染症のリスクだけでなく自己免疫疾患やがんの発症リスクが高くなり、重症化しやすくなります。
ストレスが免疫を低下させる理由は?
過剰なストレスや長期間のストレスは、自律神経の乱れを引き起こします。自律神経の乱れは免疫低下の原因であり、自律神経の乱れが引き起こす不眠や体調不良も免疫低下の原因になります。
また、過度なストレスがかかると副腎から副腎皮質ホルモンの一種「糖質コルチコイド(コルチゾール)」が分泌されます。コルチゾールは、「ステロイド薬」の原料にもなる成分です。
コルチゾールは、糖やたんぱく質、脂肪の代謝や体液の調整に関わっている大切なホルモンであり、炎症やアレルギー症状を抑える働きがありますが、免疫機能を抑制する作用があるため、長期間分泌されたり、過剰に分泌されると免疫機能の低下を引き起こすことがあります。
免疫機能を保って病気を予防するための対策は?
免疫が過剰に働くことで起こるアレルギー疾患や自己免疫疾患もあるため、免疫が全ての病気を防げるわけではありませんが、免疫機能を保つことは多くの病気の予防につながりますし健康維持にも役立ちます。免疫低下を防いで免疫力を保つためには、以下の方法で対策をとりましょう。
栄養バランスの良い、胃腸にやさしい食事を摂る
免疫機能を保つには、たんぱく質やビタミン、ミネラルをバランスよく摂ることが大切です。また、栄養をきちんと消化吸収するためにも、暴飲暴食を避けて規則正しい食事を摂るようにして、胃腸の調子を整えるようにしてください。腸内環境の改善が免疫機能維持に関係しているという研究結果もありますので、野菜や発酵食品なども積極的に食べるようにしましょう。
適度な運動を習慣化する
適度な運動は免疫の向上を助けるとされ、1週間あたりに運動する日数が多い人ほど、風邪の罹患リスクや重症化リスクが低いといわれています。ただし、フルマラソンや高負荷のウェイトトレーニングなどのように体力や筋力の限界まで追い込む運動は、免疫低下の原因になるので注意しましょう。年齢や体力、筋力差もあるので、どのくらいの運動が「適度」であるかは変わってきますが、少し汗ばむ程度・少し息が切れる程度の有酸素運動を1日20分〜30分以上、週に2日〜4日程度行うことをおすすめします。
睡眠環境を整える
睡眠不足や睡眠の質の低下は、免疫機能の低下を引き起こします。また、睡眠習慣の乱れは心や体の不調を引き起こし、感染症や病気のリスクを高めます。また、健康寿命にも睡眠が関わっています。睡眠時間を十分に確保し、寝室や寝具の工夫や入浴方法、食習慣を見直すなどして、ぐっすり眠れる環境を整えましょう。
ストレスをためないようにする
適度なストレスであれば人生の張り合いにもなり、心身に良い影響をもたらします。しかし、上記で説明したように過剰なストレスや慢性的なストレスは免疫低下を引き起こし、さまざまな不調を引き起こします。
ストレスが引き起こす症状や心身の変化
- 気力の減少
- イライラする
- 落ち込みやすくなる
- 何事にも興味がなくなる
- 仕事などでミスが増える
- 暴飲暴食
- 喫煙量や飲酒量の増加
- 肩こりや腰痛、関節などの痛み
- 頭痛
- 目の疲れ
- 息切れ、動悸
- 食欲低下
- 便秘や下痢
- 胃の痛み
気になる症状や変化に気づいたときは、時間と仕事を忘れて趣味や運動に勤しんだり、ゆっくり休むようにしてください。ストレスコーピングに取り組むなどしてもいいでしょう。
おわりに:免疫機能の低下は生活習慣の見直しである程度防げる。早めに対処を始めよう。
免疫は、私たちの体に害となる細菌、ウイルス、がん細胞などから体を守ってくれる大切なシステムです。免疫低下にはさまざまな原因があるため完全に防ぐことは難しいですが、生活習慣の見直しである程度は防ぐことができます。
感染症予防のためにも、健康寿命を伸ばすためにも、今一度生活習慣やストレスケアを見直しましょう。ただし、免疫機能に関わる病気を持っている人や免疫機能を抑制する薬を使用している人は、必ず医師と相談しながら対策をとるようにしてください。
(medicommi 2020年9月9日)