夜眠れない、気持ちが落ち着かないのは全般性不安障害かも?2021.06.17
夜寝つけない、眠りが浅い、イライラして落ち着かない、なんとなく不安な状態が続いているのは、もしかしたら全般性不安障害かもしれません。今回は全般性不安障害と睡眠の悩みの関係性と治療法やセルフケアについて解説していきます。全般性不安障害は軽く考えられがちですが、長引くと回復までに時間がかかります。思い当たることがある人は参考にしてください。
全般性不安障害(GAD)とは?ほかの不安障害と何が違うの?
毎日暮らしていくなかで、原因や対象がはっきりしないような不安や心配を抱えている状態が続くと、心や体にさまざまな症状や変化が現れるようになります。「全般性不安障害(GAD)」は、「漠然と続く不安や心配」を持ち続けてしまう状態であり、そのことが原因で心身に不調をきたす病気のことを言います。
不安障害とは、不安がおもな症状である心の病気のことです。不安障害には、はっきりとした事象が不安の原因になるもの、病気やトラウマや特定の物質が原因になるものなど、さまざまな種類があります。
不安障害の種類
- 全般性不安障害
- パニック障害
- 恐怖症
- 強迫性障害
- 外傷後ストレス障害
- 急性ストレス障害
- 一般性身体疾患による不安障害
- 物質誘発性不安障害
- 特定不能の不安障害
パニック障害などのように「苦手な環境・状況」がある程度限定できる不安障害もありますが、全般性不安障害の不安の対象は、自身の体調や家庭環境や社会生活、家族・友人の死やトラブル、世界規模の戦争や天災にいたるまで「日常で起こるあらゆるもの」が対象になり、範囲がとても広いことが特徴です。
不安の対象がたくさんあるので常に落ち着かない状態になり、そわそわして目の前の物事に集中できなかったり、やらなければいけないことに手をつけられなくなってしまいます。食事や睡眠、外出など「簡単な日常行動」に支障をきたすようになると、生活の質が著しく低下し、仕事が続けられなくなってしまうこともあります。
「病気による不安」と自覚しにくく、不安や心配を抱え込んでしまうことをコントロールできないため発見や対処が遅れてしまうことも多いといわれています。
もし、いつも気持ちが落ち着かない、いつも不安を感じている、夜眠れない日が多いという状態が続くなら、全般性不安障害の可能性がありますので、一度専門の医療機関に相談してみることをおすすめします。
全般性不安障害による睡眠障害の特徴
不眠症(睡眠障害)には、大きく以下の4種類があります。
入眠障害
- 寝つきが悪い
- 心身が疲れていて眠気もあるのに寝付けず、翌日の生活に支障が出る
- 日中は眠気に襲われるのに、夜になると眠れないという悪循環に陥りやすい
中途覚醒
- 寝付くことはできるが、夜中に何度も目が覚めてしまう
- スッキリと目覚められず、翌日以降の生活に支障が出る
早朝覚醒
- 予定していた時間よりも、大幅に早く目覚めてしまう
- 二度寝をしようとしてもできない
熟眠障害
- 寝つきが良く、途中に目覚めることもないのに朝起きると疲れている
- 十分な時間睡眠をとれているのに、ぐっすり眠れた感じがしない
全般性不安障害では、入眠障害や中途覚醒、熟眠障害が現れることが多いといわれています。いずれにしても、睡眠が浅くなり睡眠時間も不足しますので心身への負担は大きく、さらなる不調を引き起こすきっかけになることもあります。
全般性不安障害の症状は?不安や眠れない以外にもあるの?
全般性不安障害になると、以下の症状が現れます。
身体症状
- 頭痛や頭重感、圧迫されるような緊張感やしびれる感じがある
- 頭がゆれる、めまいのような症状がある
- 自分の体なのに、自分の体ではないような感じがする
- 意識がもうろうとする、そわそわするような感じがある
- 全身の悪寒や熱感、手足の冷えや熱感がある
- 全身が脈打っているように感じる
- 便秘や下痢、頻尿の症状がある
精神症状
- ほとんどの時間不安を感じ続けている
- 些細なこと、さまざまなことで不安になってしまう
- 注意散漫で、記憶力が悪くなった気がする
- 何事にも根気が続かず、疲れやすい
- 小さなことが気になり、イライラして怒ってしまう
- 悲観的になり、人に会うのも煩わしい
- 寝つきが悪く、眠れても夜中に何度も目が覚める
全般性不安障害は、強い不安が心身の症状を引き起こし、その心身症状がさらに不安を強めるという悪循環に陥りやすいです。
たとえ全般性不安障害でなくても、寝つきの悪さや何度も目覚めてしまうような状態、頭痛やめまい、手足の熱感、頻尿などが続くことは決して良いこととは言えませんし、何らかの病気が原因かもしれません。
あてはまるものがある場合は、早めに専門の医療機関に相談しましょう。
全般性不安障害はどうやって治療する?
全般性不安障害の治療は、薬物療法と認知行動療法のいずれか、もしくは組み合わせて進めていきます。
全般性不安障害の薬物療法
体の緊張や不眠にはベンゾジアゼピン系の抗不安薬を使い、継続的に繰り返す不安や心配ごとに対しては、抗うつ薬としてSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害薬)が使われることが一般的です。
全般性不安障害の認知行動療法
認知行動療法とは、カウンセリングをしながら「物事の受け止め方=認知」のゆがみを自覚し、認知への感情と行動を修正することで症状の改善を目指す治療法です。
具体的な治療目標を掲げ、その後の人生が不安から解放されたものになるよう、本人の考え方と行動のパターンを少しずつ変えていきます。
眠れない、目覚めてしまうときはセルフケアも大切
睡眠障害が続くことは、心身の疲労を増大させ、全般性不安障害の症状を悪化および長期化させる原因になります。全般性不安障害の治療は継続しつつ、より良い睡眠をとれるようにするために、生活習慣を見直しましょう。
寝室の環境づくり
質の良い睡眠、寝つきを良くするためには、寝室の環境を整える必要があります。そのなかでも、部屋の湿度と温度は重要です。これは、快適な状態でなければ体温をうまく下げられなくなってしまうからです。
エアコンと加湿器、除湿器などをうまく使い、適切な温度湿度を保ちましょう。また、肌ざわりの良いパジャマや寝心地の良い寝具をそろえ、部屋の明かりは「自分自身が不安を感じない」状態に調整することをおすすめします。
リラックスできるようなら、アロマディフューザーやお香などを使っても良いでしょう。
簡単な体操や呼吸法などで緊張をほぐす
質の高い睡眠のためには、眠りにつく2時間前までに軽めの運動をすることがおすすめです。ただし、激しい運動や眠りに着く直前の運動は、交感神経が刺激されて心と体が緊張し、寝つきが悪くなったり、睡眠の質が低下する原因になることがあります。
眠る直前には、簡単な体操や呼吸法を使ってうまくリラックスしましょう。
筋肉をゆるめてリラックスする方法
以下のように、仰向けになった状態で力を入れて緊張した後、思いっきり脱力すると筋肉がゆるみ、リラックスしやすくなります。
・手のリラックス法
① 手を「グー」にして、思いっきり力を入れて握る
② 5秒間握り続ける
③ 完全に脱力する
④ 手から腕までの力が抜けてリラックスしている感覚を味わう
・足のリラックス法
① アキレス腱を伸ばすように、足首を曲げる(つま先をすねに近づけるように)
② アキレス腱が伸びている感覚を感じたら、その状態で5秒間キープ
③ 完全に脱力する
④ 足首やアキレス腱、ふくらはぎの力が抜け、リラックスしている感覚を味わう
・全身のリラックス法
① 両手をバンザイするように腕を伸ばす(腕はできるだけ耳に近づける)
② 両手と両足をゆっくりと伸ばしながら背伸びをする(手足がそれぞれ反対側に引っ張られるようにするとストレッチが深まる)
③ 10秒〜15秒ほど伸び続け、完全に脱力する
④ 同じ動作を3回繰り返す
※肩が痛くないようであれば、バンザイするときに手の指を組み、ひっくり返してから背伸びをするとより深くストレッチできます。
腹式呼吸でリラックスする方法
腹式呼吸を意識的に行うことは、副交感神経を刺激して眠りにつきやすい状態へと導くといわれています。
仰向けの状態で寝床に入ったら、以下のように腹式呼吸を行い、体を「睡眠モード」に切り替えましょう。
① 体に残っている空気を全部吐き出すイメージで、お腹を限界までへこませながら口から大きく息を吐く
② 息を吐ききったら、お腹を膨らませながら下腹部や股関節の付け根まで空気を送り込むイメージで、鼻からゆっくり息を吸う
③ 最後まで吸いきったら、吸ったときの倍の時間をかけてお腹をへこませながら、鼻からゆっくり息を吐く
④ 息を吐ききったら、②と同じように再度鼻から息を吸い、呼吸を繰り返す
ヨガでは、息を吐き出すときに嫌なことやマイナスな感情もいっしょに吐き出すようにするとリラックスしやすいと考えられているようです。慣れないうちは、お腹をうまく使えているかどうか確認するためにお腹に手を当てながら行いましょう。
おわりに:全般性不安障害の可能性を感じたら、医療機関受診と不眠対策を
漠然とした不安を感じ続ける、イライラしやすい、気持ちが落ち着かない、夜なかなか眠れない状態が続くのは全般性不安障害かもしれません。全般性不安障害は「日常生活の当たり前の出来事」が発症につながるため、本人が自覚しにくく周囲の人からの理解も得にくいです。
また、全般性不安障害による不眠は、状態の悪化のスパイラルを引き起こし、さらなる心身の不調の原因になる可能性もあります。
気になる症状や変化に気づいたときは、「たいしたこない」と思ったとしても早めに専門の医療期間を受診し、もしうまく眠れていないようなら治療と並行して睡眠環境を見直すようにしましょう。
(medicommi 2020年9月23日)