加湿器が肺炎を引き起こすことがあるのはどうして?2021.09.09
乾燥しがちな冬場だけでなく、近年のエアコンによる空調によって、室内は一年を通じて乾燥しやすい状態になっています。こうした空気の乾燥を和らげるのに役立つのが加湿器ですが、間違った使い方をしていると過敏性肺炎を引き起こしてしまうことがあります。
この記事では過敏性肺炎とはどんな病気なのか、また、なぜ加湿器が過敏性肺炎の原因になるのか、その兆候や予防法まで解説します。
過敏性肺炎ってどんな病気?
過敏性肺炎とは、肺の中にある肺胞(小さな空気の袋)や、気管から枝分かれした空気の通り道が最も細くなっている部分(細気管支)の内部や周囲に発生する炎症のことです。原因となるのは細菌やウイルスなどの病原体ではなく、有機物である粉塵や化学物質・細菌などの抗原(アレルギーの原因物質)を繰り返し吸い込んだことによるアレルギー反応です。
主な症状は息切れ・せき・発熱などです。抗原を避けていれば反応も起こらないため症状は改善しますが、長期にわたって抗原にさらされ続けていると炎症はやがて慢性化し、炎症の起こった部位から肺がどんどん固くなっていきます。
過敏性肺炎を引き起こす抗原として、以下のような物質・微生物があります。
- カビ(中でも、トリコスポロンというカビが原因になりやすい)
- 細菌の一種
- 鳥類の排泄物に含まれるある種のタンパク質
- キノコの胞子
- イソシアネート(ポリウレタンの原料となる化学物質)
これらの抗原に反応する抗体(リンパ球)が肺の中に増えるとアレルギー反応を引き起こし、炎症が起きて酸素を取り込みにくくなったり、せきや息切れを起こしたりすると考えられています。
加湿器が過敏性肺炎の原因になるって本当?
喉や口、肌などの乾燥を防ぐために、また、空気が乾燥しているとかかりやすい風邪やインフルエンザの予防のためにも、加湿器を使って部屋の湿度を高めることは大切です。しかし、その加湿器にカビや細菌が発生している状態で使うと、加湿器によって空気中にカビや細菌をばら撒いてしまい、過敏性肺炎を引き起こしてしまう恐れがあります。
過敏性肺炎は一般的な感染性肺炎(細菌性肺炎)とは異なり、アレルギーの原因となる抗原(この場合はカビや微生物など)を失くさない限り治りません。したがって、加湿器の中でカビや細菌が繁殖しないように、また、もし繁殖させてしまった場合はすぐに掃除するよう気をつける必要があります。
加湿器のタイプによってカビや細菌の繁殖しやすさが変わるって本当?
一般的な家庭用の加湿器は蒸気やミストを放出するものですが、そのメカニズムの違いによって「加熱式(スチーム式)」「気化式」「超音波式」「ハイブリッド式」の4つのタイプに分かれます。それぞれのタイプごとに、カビや細菌の繁殖しやすさと特徴を解説します。
加熱式(スチーム式)
- タンクに入れた水を加熱して蒸気を発生させるため、カビや細菌が繁殖しにくい
- 販売価格は比較的手頃なものが多いが、熱を発生させるため電気代がかかる
気化式
- 不織布やスポンジに水を含ませ、空気を送って蒸散させることで加湿する
- 電気代は安いがパワーが弱く、こまめに清掃しないとカビや細菌の温床になる
超音波式
- 超音波によって水の粒子を小さくし、噴出させて加湿する
- 水を加熱しないため、こまめに掃除しないとカビや細菌の温床になる
ハイブリッド式(加熱式と気化式を合体したようなシステム)
- 水に温風を送って加湿するため、カビや細菌が繁殖しにくい
- 加湿速度が早く消費電力も比較的少ないが、機器そのものの価格がやや高め
気化式や超音波式の加湿器を使っている方は、カビや細菌を撒き散らさないよう、こまめな清掃が必要です。電気代も安く、加熱しないため、小さなお子さんがいる家でも使いやすいのですが、内部でカビや細菌を繁殖させないよう、定期的にお手入れしましょう。
また、加熱式やハイブリッド式はカビや細菌が繁殖しにくいですが、水を入れっぱなしにしたまま電源を切って放置してしまうとカビや細菌の温床になることがあります。長期間使わない場合は必ず水を抜いて清掃し、乾燥させましょう。
過敏性肺炎の症状の兆候は?
過敏性肺炎の症状の兆候は、「せきや痰・発熱などの症状が起こる」「家にいる時間が長くなると症状がひどくなる」などです。初期症状はカビなどの抗原を吸い込んでから4〜6時間程度で発症しますが、軽い風邪などと区別がしにくいため、そのうち治るだろうと思う方も少なくありません。
しかし、過敏性肺炎はアレルギー反応のため、抗原を取り除かない限り症状は改善しません。抗原から離れれば数日〜10日間程度でおさまりますが、放置していると次第に症状が重くなり、息切れなどの呼吸困難を伴う肺炎の症状が現れます。
また、抗原を取り除かないまま肺の炎症を繰り返してしまうと、肺が線維化し固く分厚くなる「肺線維症」という慢性的な病気に進行してしまう場合もあります。上記のような症状に気づいたら、できるだけ早く原因をつきとめ、清掃で抗原を取り除いたり、近寄ったりしないようにしましょう。
加湿器をこまめに清掃して、肺炎を予防しよう!
加湿器にカビや細菌が繁殖してしまうのを防ぐために、以下のポイントに注意しましょう。
水を長期間溜めっぱなしにしない
- 原則としてタンクの水は毎日新しい水道水を使い、継ぎ足さない
- 古い水を溜めたままにするとカビや雑菌が繁殖しやすくなるのでその都度捨てる
こまめに清掃し、消耗品の期限は守る
- 各加湿器の取扱説明書に従い、メーカーの推奨するお手入れ方法でこまめに清掃する
- フィルターなどの消耗品は使用期限が切れると性能が落ちるため、交換時期を守る
使用しないときは、タンクの水を抜いてよく乾燥させる
- 単に水を抜いただけだとタンク内は濡れたままになるため、カビや雑菌が繁殖しやすい
- 特に、気温が一気に上がる春先から夏にかけては繁殖しやすい状態になるので注意する
- 長期間使わないときは、タンクの水を抜いてしっかりと乾燥させる
乾燥や、乾燥を好む病原体から身体を守るための加湿器で、さらなる炎症を引き起こすことのないよう、加湿器は正しく清潔に使いましょう。
おわりに:加湿器で肺炎を引き起こさないよう、カビや細菌の繁殖を防ごう
加湿器によって肺炎を発症するのは、加湿器の内部にカビや細菌が繁殖して空気中にばら撒かれてしまうのが原因です。加熱タイプの加湿器ではカビや細菌が繁殖しにくいのですが、気化式や超音波式では加熱しないため、こまめな清掃が欠かせません。また、タンクの水は毎日交換するとともに、長期間使わないときは水を抜いてよく乾燥させてからしまいましょう。
(medicommi 2020年4月18日)