健康に役立つ油や脂肪の摂取方法と調理方法のコツ2021.11.25
肥満や生活習慣病の予防には、揚げ物や脂肪分が多い食事を控える必要があります。しかし、油や脂肪は必要な栄養で、健康に良い影響を与える種類の油もあります。今回は、健康を保つうえで気をつけたい油の選び方や食品の選び方、食事を楽しみながら脂質を抑える調理方法のコツを解説します。
油や脂肪の役割
食べものに含まれる油や脂肪は三大栄養素の「脂質」で、脂肪酸から構成されています。脂肪酸は、生命活動に必要なエネルギー、細胞膜・核膜・神経組織・生理活性物質(ホルモン、神経伝達物質、サイトカインなど)の材料として利用されたり、脂溶性ビタミンの吸収を助ける役割があります。また、皮下脂肪や内臓脂肪として貯蔵され、体温の維持、内臓位置を保つ、外部からの衝撃や寒さから守るなどの働きもあります。
脂質の摂りすぎが、肥満、脂質異常症、動脈硬化などの原因になることはご存知だと思いますが、脂質が不足することもさまざまな健康トラブルの原因になります。
脂質不足による健康トラブル
- 体力低下
- 免疫低下
- 心身の疲労
- ホルモンバランスの乱れ
- 皮膚トラブル
- 月経トラブル など
ダイエットや健康維持のために、脂質や糖質を制限している方もいると思いますが、脂質も糖質も必要不可欠な栄養なので、過度な制限はよくありません。油や脂肪は量だけでなく「種類」に気をつけることが大切です。
油・脂肪を摂るときに気をつけること
油や脂肪を構成する脂肪酸は、大きく「飽和脂肪酸」と「不飽和脂肪酸」に分けられます。
飽和脂肪酸は、食肉・乳製品・卵黄などの動物由来の油・脂肪、チョコレート、ココナッツ、パーム油などに多く含まれ、エネルギーとして利用しやすく、酸化しにくいというメリットはあります。一方で、過剰に摂取すると血中の中性脂肪やLDL(悪玉)コレステロールを増加させ、脂質異常症や動脈硬化のリスクを高めます。
不飽和脂肪酸は、一価不飽和脂肪酸と多価不飽和脂肪酸に分けられ、LDLコレステロールを減らす働きがあるとされています。不飽和脂肪酸は、植物由来の油や魚由来の脂肪(とくに青魚)に多く含まれています。
健康のためには、飽和脂肪酸を控えて不飽和脂肪酸の量を増やすことが良いのですが、不飽和脂肪酸も高カロリーな「油」であることに変わりないため、過剰摂取に注意が必要です。また、肉類には飽和脂肪酸以外にも必要な栄養が豊富に含まれています。このため、飽和脂肪酸を控えるために肉類を完全に断つこともよくありません。
現代は、風味や食感を高めるために調理過程で油が使われることが多く、目に見えない油を摂取する機会も多いので、油や脂肪の量には気をつける必要はあります。ただ、厚生労働省が「食事バランスガイド」を発信しているように、健康な食事は油や脂肪だけでなく、全体的なバランスを整えることが第一です。できるだけ多くの食品を使った食事を摂るように心がけましょう。
【MCTオイルについて】
MCTオイルとは、ココナッツオイルやパーム油、牛乳などに含まれる中鎖脂肪酸のことです。食品中に含まれる油や脂肪の多くは長鎖脂肪酸ですが、MCTオイルは長鎖脂肪酸よりもエネルギーに変わりやすいため、体脂肪がつきにくいといわれています。栄養補給などの目的で医療の現場でも使われていた歴史があり、最近はトレーニングやダイエットでも使われています。
MCTオイルに一定の効果が期待できることは事実ですが、高カロリーの油であることには変わりありません。エネルギーとして消費されなければ脂肪として蓄えられますし、過剰摂取により下痢や吐き気などの不調が出ることもあります。栄養バランスの良い食事を摂ることが大前提で、あくまでも普段使っている油や糖質の置き換えとして利用するに留めましょう。
また、すでに医師から食事指導を受けている場合は、必ず医師に許可を得てから使用してください。
食事を楽しみながら油や脂肪を抑えるコツ
食事の目的は生命活動に必要な栄養を補給することではありますが、食事を通じて「生きがい」「喜び」「楽しみ」「自尊感情」を得られることから、精神的な健康への影響も大きいと考えられています。これは糖質制限や塩分制限の食事を考えるときにも言えることですが、油や脂肪を抑えたいと考えたときに、脂質の摂取量だけを見ていても長続きしないでしょう。
制限がどの程度必要かにもよりますが、健康な方が予防のために脂質制限を考える場合、調理方法や素材の工夫で対応できることもあります。
【脂質制限のためにできる工夫】
- 外食、市販の惣菜、コンビニ弁当、レトルト食品を避ける
- 「揚げる・炒める」より「蒸す」「煮る」料理を増やす
- 脂肪分が多い食材は網焼きで脂を落とす
- 1日のうち1食は魚をメインディッシュにする
- 揚げ物は、揚げ焼きやノンオイルフライヤーで作る
- 肉は脂身や皮を落としたり、下茹でや湯通しするなど「ひと手間」かける
- コレステロールの吸収を抑える食物繊維(野菜、きのこ類、海藻類など)を多く摂る
上記でも説明したように、飽和脂肪酸より不飽和脂肪酸を選んで欲しいのですが、不飽和脂肪酸は酸化しやすいため注意が必要です。酸化した油は健康に良くない影響を与えることがあります。調理油も食材も新鮮なものを選び、調理油に関しては鮮度が落ちにくいボトル(空気や光の影響を受けにくいもの)を使ったものを選びましょう。
油や調味料を減らすには「素材を活かす」料理が最適です。最近は、新鮮な産地直送の食材や地域のブランド食材なども手に入りやすくなりました。外食を減らして浮いた費用を、お取り寄せで使って楽しむことも食事を楽しむうえではおすすめです。味と栄養を考慮して改良した「機能性表示」のあるブランド食材もありますので、機会があればぜひ試してみてください。
おわりに:健康的に油を摂るには不飽和脂肪酸がポイント。ただしバランスの良い食事が大前提です
食用油や脂肪などの「脂質」は、必要な栄養のため完全に断ってはいけません。飽和脂肪酸を避け、不飽和脂肪酸の割合を多くすることが健康維持に役立ちますが、不飽和脂肪酸も高カロリーではあるので、摂りすぎには注意しましょう。
健康維持には「バランスの整った食事」が必要不可欠です。また、「食事を楽しむ」ことは心の健康を維持するうえで大切になってきます。過度な食事制限、食品制限に走ると食事が楽しめなくなりますし、長続きもしにくくなってきます。うまく工夫しながら、おいしく楽しめる食事をとりましょう。
(medicommi 2021年2月21日)