宅配弁当やテイクアウト食品は何時間以内に食べたほうがいいの?2022.01.06
宅配やデリバリー、テイクアウトのように、家でお弁当などを食べることができるサービスはとても便利です。しかし配達や持ち帰りの時間がかかるため、注意しないと食中毒を引き起こすおそれがあります。この記事では、宅配弁当などを利用するときに気をつけたい食中毒予防法をご紹介します。
宅配・テイクアウトで注意したほうがいいことは?
店内で飲食をするのではなく、お弁当など購入した調理食品をテイクアウトして食べたときに発生する食中毒は、調理や保存を誤った方法で行ったことが原因になることが多いです。
誤った方法で調理や保存をすることで、お弁当箱の中で細菌が増殖したり、お弁当のおかずなどに付着した細菌やウイルスが体内に入り、以下のような食中毒の症状を引き起こします。
食中毒の症状
- 下痢
- 腹痛
- 発熱
- 吐き気
宅配やテイクアウト食品ならではの食中毒の原因
調理から食事まで時間がかかる
配達や持ち帰りが必要なので、調理から食事までの時間が長くなります。温かい食品を室温に放置すると、食品は食中毒の原因病原体が増殖しやすい20℃~50℃になるため、菌が活発に増殖します。また、サラダや生ものといった加熱していない食品は、常温で持ち運ぶことで食中毒の原因菌が増殖するおそれがあります。
大量調理になりやすい
宅配やテイクアウトの場合、注文が重なったときに一度に料理を作る量が多くなります。大量調理で作った食品は冷めにくいため、菌が増殖しやすいです。
アレルギー物質や注意点について直接説明できない
店内で調理した料理を宅配したり、テイクアウトしたりする場合、消費期限や原材料名の食品表示が義務付けられていません。食品の取り扱いの説明と理解が不十分になりやすいため、食中毒や食物アレルギーを引き起こす可能性があります。
食中毒を引き起こす細菌・ウイルスの種類
食中毒を引き起こす代表的な細菌とウイルスとして、以下のようなものがあります。
サルモネラ菌
関連食品
生卵、オムレツ、卵焼き、肉、牛肉のたたき、レバ刺し、魚など
特徴
乾燥に強く、熱に弱い。加熱不十分の調理に注意が必要
症状
吐き気、腹痛、下痢、発熱、頭痛など
黄色ブドウ球菌
関連食品
おにぎり、巻き寿司、サンドイッチなど、手で調理することが多い料理
特徴
皮膚、鼻、口内の常在菌で、傷やニキビなどを触った手に付着することが多い。菌が付着した手で、調理や配膳などをしたときに食品を汚染する。黄色ブドウ球菌の毒素は強く、食品を加熱しても黄色ブドウ球菌による食中毒を防ぐことができない
症状
吐き気、腹痛など
腸炎ビブリオ菌
関連食品
生魚、貝、魚介類、寿司、刺身など
特徴
真水や熱に弱い。塩分があるところで増殖する
症状
激しい下痢、腹痛など
カンピロバクター
関連食品
鶏肉、焼き鳥、生野菜、井戸水、湧き水など
特徴
乾燥と熱に弱く、加熱調理で死滅させることができる
症状
下痢、発熱、吐き気、腹痛、筋肉痛など
腸管出血性大腸菌(O157、O111など)
関連食品
加熱が不十分な肉や野菜、井戸水、湧き水など
特徴
加熱することで死滅する
症状
激しい腹痛、下痢、血が多く混ざった下痢など
ノロウイルス
関連食品
生の二枚貝、加熱不十分な牡蠣、汚染された水など
特徴
85℃以上で1分以上加熱すると死滅する
症状
吐き気、ひどい下痢、腹痛など
E型肝炎ウイルス
関連食品
加熱不十分な豚肉、内臓類など
症状
ほとんどは無症状。ただし、一部の感染者はだるさや発熱、皮膚の黄疸などがみられる
食中毒の原因となる病原体が増殖する好条件
食中毒の原因となる病原体は、水分・栄養・適温が好ましい条件で揃ったときに最も増殖します。これらのうち、食品は水分と栄養をほとんど必ず持っていますが、食中毒の原因となる病原体が好まない温度にコントロールすることができます。
ほとんどの菌は10℃~60℃を好んで増殖しますが、人肌に近い35℃前後で最も増殖しやすいと言われています。このため、食品を常温で放置すること、常温で解凍することは、菌が好む適温で増殖のチャンスを与えていると言えます。
温度と菌・ウイルスの増殖
- 65℃以上:死滅することが多い(ただし菌の種類による)
- 60℃前後:ゆっくりとだが増える
- 50℃前後:増える
- 35℃前後:適温のため、猛スピードで増殖
- 20℃前後:増える
- 10℃前後:ゆっくりとだが増える
- 0℃前後:増える菌もある
- -10℃以下:増えない
飲食店や宅配業者が行っている衛生管理
食中毒発生を防ぐため、飲食店や宅配業者に推奨される調理と配送に関する衛生管理をご紹介します。
- 調理はできるだけ短時間で行う
- 加熱調理後、食品は十分に放冷してから容器に詰める
- 調理した食品は直射日光や高温多湿を避ける
- 調理した食品は適切な温度で保管する
- 配送するときは、容器の破損などによって食品が汚染されないよう注意する
- 調理から消費者が食事するまでの時間が長時間に及ばないように注意する
- 当日の販売量や販売時間を見込んで調理や製造の計画を立てる
- 配送時間が長時間にならないようにする
- 消費者に対して、購入した食品を早く食べるように促す
宅配弁当やテイクアウト食品で食中毒を防ぐには
宅配やテイクアウト食品は、冷蔵または常温で運ぶことが多いです。飲食店や配送業者は衛生管理に注意を払っていますが、食品を口にする消費者も食中毒予防の取り組みをすることで安全性をより高めることができます。
食中毒予防のポイント
なるべく早く食べる
持ち運びや宅配の間、食品の温度は変化します。時間が経つほど食中毒の原因菌が増殖する可能性が高くなります。安全性を考えて、調理してから2時間以内に食べるようにしましょう。調理時間が表示されている食品を購入したり、購入前に店員さんに確認したりすると安心です。
すぐに食べられない場合は、常温保存しない
食べきれなかったものを保存するときは、常温を避けてください。冷蔵庫または冷凍庫で保存しましょう。
残った食べ物を長時間とっておかない
時間とともに食品の食中毒リスクは上昇します。もったいなく感じるかもしれませんが、時間が経った食品は捨てましょう。
75℃以上の加熱調理をした食品でも、時間が経って50℃以下になると食中毒の原因菌が増殖します。10℃以下の環境は食中毒の原因となる病原体が好まないため、増殖はゆるやかになりますが、病原体そのものが死滅するわけではありません。保存は注意して行うとともに、料理を温め直すときは75℃以上で加熱しましょう。
冷蔵・冷凍保存のポイント
- 冷蔵庫内は10℃以下に保つ
- 冷凍庫は-18℃以下を保つ
- 温かい食品は冷ましてから入れる
- 庫内に食品を詰め込みすぎない
- ドアの開け閉めの回数を減らす
- ドアを開けっ放しにしない
おわりに:宅配、テイクアウト弁当はなるべく早く食べ、常温保存は避けましょう
宅配やテイクアウト食品は、購入から食べるまでに時間がかかります。調理から時間が経つほど食中毒の危険性が高まりますので、購入後は早く食べましょう。また、食べきれないときは常温保存を避けて、冷蔵または冷凍保存するのがおすすめです。
(medicommi 2020年5月14日)