食後のひどい眠気は血糖値スパイクかも?どうやって防げばいい?2022.01.27
昼ご飯を食べた後、なんだか眠くなってしまう、午後の授業や仕事に集中できないことは、誰もが経験するかと思います。しかし、勉強や仕事、家事ができなくなってしまうような、耐えられないほどの食後のひどい眠気は「血糖値スパイク」という状態になっているかもしれません。
この記事では、血糖値スパイクの原因と食後の眠気の予防方法について解説していきます。
食後に眠くなるのはどうして?
食事を食べた後、なんとなくうとうとと眠くなるのは誰でもあることです。脳を活発に働かせる物質のひとつに「オレキシン」があります。
オレキシンが活発に働いていると、起きている(覚醒している)状態が保たれます。オレキシンは、空腹時に血糖値が低くなると活性化し、満腹になって血糖値が高くなると活動が低下します。
オレキシンの作用で眠くなることはわかっていて、この作用は健康な人なら誰にでも起こりうる正常な反応です。つまり、食後に眠くなるのは、満腹になってオレキシンの活動が低下して、覚醒している状態が保ちにくくなった結果による反応、ということになります。
しかし、反対に、「食後に低血糖を起こして眠気が生じる」場合もあります。低血糖とは、血糖値が異常に低くなることで、冷や汗、ふるえ、動悸、目のかすみ、眠気、生あくびなどの中枢神経系の症状が現れます。
低血糖が起こるおもな原因には、以下が考えられます。
- 食事の時間がいつもより遅れた、量が少なかった
- 運動や労働など活動量が多すぎた
- 空腹状態のときに激しい運動を行った
- 糖尿病の内服薬やインスリンの量を増やした、もしくは、時間を変更した
- 糖尿病治療薬以外の薬やアルコール類を飲んだ
- 性周期における、月経開始時
しかし、食後に低血糖が起こる原因については、上記のいずれにも当てはまりません。では、なぜ食後に低血糖が起こるのでしょうか。
食後のひどい眠気を招く血糖値スパイクとは?
食後に低血糖が起こるのは「血糖値スパイク」という現象が原因だと考えられています。血糖値スパイクとは、食後に血糖値が急上昇し、上昇した血糖値を下げるためにインスリンという血糖値を下げるホルモンが大量に分泌され、血糖値が急降下する現象のことです。
この急上昇と急降下をグラフに書くと「スパイク(くぎ)」のように鋭く尖って見えることから、血糖値スパイクと呼ばれています。
食後に血糖値が少し上がることは誰でも起こりますが、健康な人の場合、上がり方も下がり方も穏やかで、食後に一時的に血糖値が高くなったとしても上がりすぎになることはありません。そのため、インスリンをそれほど多く分泌する必要もなく、血糖値も緩やかに下がっていくので低血糖を起こさずに済みます。
血糖値スパイクは、放置したままでいると動脈硬化が進んで血管が傷みやすくなり、炎症や酸化ストレスも起こりやすくなります。また、長期間にわたって血糖値スパイクが続くことは、心血管疾患のリスクや脳卒中のリスク、認知症の進行にも関係すると考えられています。
食後にひどい疲労感がある、ぐったりとイスに座ったままになってしまう、耐え難いほどの眠気を感じるなど、元気を感じられない場合は「血糖値スパイク」が起きている可能性があるので注意しましょう。
血糖値スパイクにはどんなリスクがある?
血糖値スパイクが続くと、体には以下のリスクが生じます。
血糖値が急変動することによる集中力の低下
血糖値が急上昇するときに強い眠気が生じますが、その後急降下するときに空腹感、イライラ感、集中力・判断力の低下などを引き起こします。
放置すると糖尿病への移行や重症化のリスクがある
血糖値スパイクは、糖尿病予備群や糖尿病を発病して間もない人に多く、放置していると糖尿病に移行したり、症状が重症化したりするリスクが高まります。
心筋梗塞や脳梗塞などのリスクが高くなる
血糖値スパイクを繰り返すと血管の壁がボロボロに傷んで動脈硬化が進行するため、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが高くなります。
インスリンの過剰分泌が認知症の一因になる
血糖値が急上昇するとインスリンが過剰に分泌されるが、インスリンの過剰分泌は、アルツハイマー型認知症の原因とされる脳の老廃物「アミロイドβ」の蓄積を促進してしまうため、認知症を進行させる一因になると考えられています。
がん細胞を増殖させ、発症リスクを高める可能性がある
インスリンには細胞を増殖させる働きがあるため「がん細胞」も増殖させてしまい、がんの発症リスクを高める可能性があります。
血糖値スパイクは、眠気やイライラなどの神経系の症状を引き起こすだけではありません。血糖値スパイクを何度も繰り返すと、血管を傷つけて動脈硬化が進行し、心筋梗塞や脳梗塞などを引き起こしたり、インスリンの過剰分泌によってインスリンを分泌している膵臓が疲弊し、糖尿病に移行してしまったりするリスクもあります。
また、インスリンの過剰分泌は、脳の老廃物「アミロイドβ」を蓄積させたり、細胞の増殖を促したりすることで認知症のリスクを高めたり、がんを発症させる危険性につながるともいわれています。これらは、どれも生命や健康寿命に大きく関わる問題です。
血糖値スパイクを予防するにはどうすればいい?
血糖値スパイクは、食事のときのセルフケアである程度予防できます。食事では、ぜひ以下のことに気をつけてみてください。
ベジファーストにする
ベジファーストとは、野菜や海藻などを食事の最初に食べることです。小腸に栄養吸収のクッションとなる膜のような状態を作ってくれるため、ブドウ糖の吸収が穏やかになり、血糖値の上昇も穏やかになります。
食事を抜かない
朝食を抜いて前日夜から昼まで何も食べないなど、空腹状態が長すぎることは、食後の血糖値の急上昇の原因となります。1日3食、きちんと規則正しく食べるようにしましょう。
1口30回を目安によく噛む
血糖値の急上昇は、よく噛み、ゆっくり食べることでも抑えられます。1口30回を目安に、よく噛んで食べることを心がけましょう。30回噛んでいる最中に飲み込んでしまう場合は、一口の量が多すぎます。一口の量を減らすようにしてください。
食後に運動などをして筋肉を動かす
筋肉を動かしてブドウ糖を消費することで血糖値の上昇を抑えられます。全身の筋肉の約70%は下半身(臀部、脚部)の筋肉です。食後の適切なタイミングで、階段を上り下りすることをおすすめします。
血糖値スパイク予防におすすめのランチ
血糖値スパイクによる日中の眠気を予防するには、ランチの内容にも気をつかいましょう。血糖値の上昇を防ぐため、ランチでは糖分や炭水化物を控えめにしたメニューを選び、血糖値の上昇を抑える食物繊維を多めに摂るようにしてください。
具体的には、ご飯を小さなお茶碗1杯に魚や野菜、大豆製品を中心としたあっさりしたメニューにすることをおすすめします。
また、ラーメンやパンなど「炭水化物が多めのランチメニュー」で済ませる人も多いでしょうが、定食やサラダセットなどのメニューを選ぶようにすると、血糖値スパイクも防げますし、栄養バランスも整いやすくなります。
おわりに:血糖値スパイクはリスク大!毎日の工夫で予防しよう
食後の耐えられないほどひどい眠気が起こるのは、血糖値スパイクが原因の可能性があります。血糖値スパイクは、食後に高くなりすぎた血糖値を下げようとインスリンが過剰分泌されてしまい、急激に血糖値が下がってしまうことが原因です。
血糖値スパイクを放置すると、動脈硬化が進行し、心筋梗塞、脳卒中、認知症、がんなどの深刻な病気のリスクを高める可能性があります。食事や運動、生活習慣に気をつけながら血糖値スパイクを予防しましょう。
(medicommi 2019年10月9日)