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【産婦人科医コラム】不妊症の患者さまが、突然泣き出しちゃう理由とは?①2023.06.15

はじめに

女性にとって、不妊症は精神的にも、肉体的にもつらいものです。日頃の診療におきましても辛さがひしひしと伝わってきます。ですから医師は優しく丁寧に接するのは当たり前で、常に最新の医療を提供できるように日頃より研鑽を怠ってはいけません。患者さまがクリニックに来るだけでも十分勇気がいることもわかっております。当院を選んで来ていただけるだけでも感謝しかありません。

そのなかで、はじめての不妊症で当院に来て、突然泣き出してしまう患者さまが毎年何人かいます。「その理由とは?」ということで全2回にわたりコラムを書かせていただきます。

医学的などこにでも書いてある話ではつまらないと言うご意見を参考に、あくまでこれまでの私の診療経験に基づく私的見解になりますことをご了承下さい。

内容について当然、最近多いドクターハラスメントやパワーハラスメントは論外です。ドラマみたいに癌が見つかったとか、そういう話でもありません。

不妊症で来院された患者さまが泣き出すということは、なにかを理解して感情的にも高ぶりがあることと、素直に感情をドクターに見せていただいているので、それ事態は決して悪い事ではありません。こちらとしては心を開いてくれているので嬉しい状況ではあります。ここから、一緒に頑張ろうと並走できて、笑顔を取り戻すきっかけにもなります。

泣き出してしまう理由とは?

泣き出すような感情が高ぶってしまう理由は大きく2つあります。ひとつ目は、
「わたしの3年間はなんだったのですか?」
「わたしの3年を返して欲しい。」といったパターンです。

通常の不妊治療は男性が不妊原因の半分を占めているので、まずは最初に精子の検査が常識です。顕微鏡でみて、数や運動性をカウントするだけなので、費用も保険適用になり自己負担額は1,000円くらいです。この簡単な検査をやらないと市町村の不妊治療補助金5万円(補助制度は各市町村により異なります)が受けられないほど、大事な検査です。

しかし、現実は数秒もかからない簡単な検査なのに、実施していないクリニックも少なくありません。理由はいろいろあるようですが、単に見たくないとか単純な理由で実施しないケースがあるようです。

そこで当院に来院して、はじめて男性側の検査をするわけです。痛くも痒くもなく、自己負担額も1,000円ほどで、検査を受ければ補助金5万円まで返ってくるので、「一回でいいからご主人さんに協力してもらって」とお伝えしています。そして、検査をしたところ、精子がいない、もしくは精子の数がごく僅かで自然妊娠は難しいと聞いて感情が高まるのです。

精子が原因で不妊症なのに、無駄に精神的、肉体的、金銭的に数ヶ月から数年を費やして、女性側だけの無駄な治療だったとなれば、それは誰でも泣き出したくなります。子供ができないことで日常的に自分を責めていて、あるいは姑などの他人に責められていて、自分が悪くないことがわかって、ほっとした感情もあり肩の荷がおりて泣くこともあります。

男性側の検査について前回ちゃんと妊娠ができているからと同意の上で検査を省いてるケースもあるのかもしれませんが、コロナにかかって高熱が続き、造精子能力(精子を作る力)が落ちている場合もあるのです。油断しないで、精子検査は最初にすることをおすすめいたします。

卵管検査も同じことが言えます。卵管が閉鎖し詰まっていたら100%妊娠できません。卵管検査をしないままの不妊治療はあり得ません。よくネットの書き込みなどで検査自体が「痛い」と言う書き込みが多いので、それを信じてしまっている方が多いです。

しかし、閉鎖し詰まった卵管を通すときに痛みが一番強いのです。卵管検査をして問題ない人は痛みが少ないです。つまり、詰まっている卵管を開通させることになるので、痛い方ほど「やってよかったね」となります。患者さまもドクターも、精子検査に加え、卵管検査も最初にすることは必須です。

ここまで不妊症の患者さまが突然泣き出してしまう理由のひとつ目についてお話させていただきましたが、次回は泣き出してしまうふたつ目の理由についてお伝えいたします。

佐藤 力

佐藤 力

西国分寺レディースクリニック 院長

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