【産婦人科医コラム】妊娠する力を守るために、今自分でできるFA(Fertility Awareness)宣言!(後編)2018.07.27
前回のコラムで、妊娠する力について自覚し、それを守る行動をとるのがFertility Awarenessだと言うお話をいたしました。
結婚して、子どもをつくりたいと思い、検査を受けて気づいた時には時期遅しということの無いように、若いうちから正しい知識をもち、女性の場合は定期的に婦人科を受診しておくことで将来の不妊を予防できるということをお伝えしました。
今回はその続きです。
正しい知識をもち、不妊を予防する(男性)
近年では女性だけでなく、男性も加齢による精子の質の低下が報告されています。
また若いころの不健全なマスターベーションが正常な夫婦生活の妨げになったり、成人してからのおたふくかぜなどで高熱が続き精子をつくる機能が低下することもあります。
男性もFAとして、結婚の有無にかかわらず精液検査を受けることができます。最近では専用のキットを5000円くらいで購入し、スマホを通して検査をうけることも可能になっています。
精子のためには長い禁欲期間よりも、2~3日程度の禁欲状態が良いと言われ、精巣には締め付けのあるブリーフよりも、風通しの良いトランクスを身に着けることで精巣の温度が高くならないようすることも良いと言われています。
体外受精だけに頼らずFAを
今、日本では驚くことに、体外受精や顕微授精などの高度生殖医療を受けて生まれる赤ちゃんの割合は19人に1人となっています。
しかし、技術でカバーできることは限られています。
FAには身体の健康を保ち、不妊を誘発する要因のコントロールも含まれます。
タバコは卵子や精子の数や質に悪影響を与えます。
喫煙や過度なアルコール・カフェインの摂取を控え、食事や運動、睡眠をしっかりとり、ストレスを出来るだけ貯めないようにしましょう。
また活性酸素が高くなると生活習慣病やがん、加齢などが進み妊娠にも少なからず悪影響があります。
予防のためには良質なたんぱく質とビタミンをしっかりとることや適度な運動をすることが良いとされています。
また、赤ちゃんの神経系の異常や二分脊椎、無脳症などを予防するためには葉酸の摂取が必要です。
葉酸はブロッコリーや人参、ホウレン草、納豆の中などに含まれていますが、赤ちゃんのためには400μℊ以上の摂取が必要とされ、食事だけでの摂取は難しいと言われています。
妊娠1か月前から葉酸を摂取し、血中の葉酸濃度をしっかり上げ、妊娠12週まで内服することが重要です。
最後に
結婚後に妊娠に向けて受ける検査を不妊スクリーニング検査と言います。
また結婚前にそれらの検査を受けることをブライダルチェックと言います。
一方で、若いころから妊娠のしくみや卵子・精子の老化、妊娠・出産適齢期を知り、健康的な生活を心がけ、不妊を誘発するリスクを自分自身でコントロールし、妊娠する力を守るすべを自分自身でもつことをFertility Awareness = FAと言います。
産む力を守るため知識の獲得とそれに基づいた定期検診は諸外国ではすでに定着したものとなっています。
皆さんも自分らしい選択のために、是非今日から、FA宣言をしましょう!
村上貴美子
医療法人 蔵本ウイメンズクリニック
女性へのメッセージ
不妊であることを経験したからこそ、夫婦にとって子どもとは何なのか、また夫婦であるとは何なのかを深く考える機会となっていると思います。 今は、不妊の問題をはじめ仕事と不妊治療の両立、がん治療前の妊孕性の温存など様々な課題がありますが、お二人が不妊であることも含め、ご自分らしい道を見つけ歩んで行けるよう、医療の中で最も患者様に近い職種として、皆様の思いに寄り添いながら支援をさせていただきたいと思っています。不安に思ったとき、悩んでいるときなど、どうぞ遠慮せずにご相談下さい。