【産婦人科医コラム】婦人科の良性疾患と腹腔鏡下手術(2)2019.03.01
婦人科で行われる腹腔鏡下手術について、前回のコラムは子宮筋腫と子宮腺筋症について紹介しました。
今回は卵巣腫瘍と子宮内膜症についてお話したいと思います。
卵巣腫瘍
卵巣は正常でも時に嚢胞や血腫ができる臓器です。
その際は「機能性」という言葉を用います。
卵巣腫瘍は卵巣内に粘液・漿液・血液などがたまる場合がほとんどです。
卵巣が腫大していると、まず悪性腫瘍(卵巣癌)を否定する必要があります。
多くは、CT・MRIなどの画像診断を行い、腫瘍マーカー(CA125, CA19-9など)という血液検査で鑑別します。
癌が疑われる場合は、(腹腔内で)内容が漏れることにより癌の予後を悪くする可能性が高く、腹腔鏡下手術は原則適応外です。
良性の場合、腹腔鏡下に部分摘出(核出)もしくは付属器切除を行います。
部分切除では表面に薄い切開を入れ、皮をむくように摘出します。
むいた残りの卵巣は、必要に応じ縫合して形を整えます。
摘出物は腹腔内で袋に入れて、鉗子を入れた臍穴などから小さくして引き出します。
最も多い卵巣腫瘍は「皮様嚢胞」で、中に毛髪・脂肪・水分・骨を含んでおり特徴的でCTで診断します。
子宮内膜症
月経困難症や不妊症の原因となる子宮内膜症、月経血が卵管を通して腹腔内に逆流することが主因と考えられています。
初期は腹腔内を観察しないと診断が困難です。
中等症以上は内診やMRIなどで診断し、卵巣にできた子宮内膜症であるチョコレート嚢胞の場合は超音波検査で診断できます。
CA125が高くなるのも特徴です。
原因が解らない不妊症の精査として腹腔鏡検査を行うと、多くの症例で子宮内膜症が見られます。
重症例は癒着が強く手術の難易度が上がりますが、腹腔鏡下手術により月経痛の軽減や不妊症の改善が期待できます。
重要なことは、手術をしても放置すると多くの場合再発することです。
よって、診断された場合は、閉経までしっかり管理することが重要です。
低用量ピルや黄体ホルモンであるジエノゲストは再発をかなり高い確率で抑えることができます。
基本的に良性疾患ですが、チョコレート嚢胞の一部は癌化することが知られており、特に閉経前にある程度の大きさが続いている場合は摘出を勧めます。
婦人科良性疾患の多くは、腹腔鏡下手術で対応できると考えられています。
開腹手術に比べ、より短期間の入院、術後疼痛の軽減、術後復職までの期間短縮が認められています。
一方で良性とはいえ、非常に大きな子宮や癒着の強い症例など、腹腔鏡下手術にとって非常に難易度の高い手術が含まれているのも現実です。
手術の適応があると診断された際は、充分に担当医と話し合い、自分にとって最も適切な治療法を充分に納得された上で選択することが肝要です。