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【医療スタッフコラム】更年期以降のホルモンバランス変化と歯周病2019.11.08

更年期以降のホルモンバランス変化と歯周病

前回のコラムで「歯周病」について説明をしました。 「歯周病」は「バイオフィルム」に含まれる細菌が引き金になりますが、思春期や妊娠期に多く分泌される性ホルモン(エストロゲンやプロゲステロン)が、そのような菌を増やすのでしたね。

「歯周病」が起こるには、細菌という外から来る敵の他にも、私たちの体の中にある免疫細胞も重要な因子です。

細菌が歯の周囲に侵入すると、免疫細胞が細菌から私たちの体を守ってくれるのですが、全身を守るがために、末端の歯の周りの組織を犠牲に壊すこともあります。

その結果、歯の周りの骨が溶ける段階である「歯周炎」へと進行させます。

今回は、更年期や閉経後にエストロゲンの分泌が少なくなると免疫細胞から出される炎症性サイトカインが増加して「歯周病」になりやすくなることや、エストロゲンを補充するとそれを防いでくれるかもしれないというお話をしましょう。

更年期以後の女性に生じるホルモンバランスの変化で、お口の中に不快な感じが生じることがあります。

例えば、口が渇く、歯ぐきに痛みや熱くてヒリヒリする感じがある、味覚の変化がある(特に塩味、辛味、酸味)です。

歯ぐきから出血しやすくなったり、歯ぐきの色に変化が出たりする人もいます。

このような症状が出る理由は、エストロゲンの減少の他に、高齢になると服用する薬が増えることで、薬の副作用で唾液が減少するのも一つです。

唾液は口の中を清潔に保ってくれるからです。また、エストロゲンの量が少なくなると骨粗鬆症のリスクが高くなりますが、骨粗鬆症と「歯周炎」や歯の喪失の間に関連性があることも分かっています。

70歳以上の女性で、重度の骨粗鬆症に罹っている人は、同じ年齢の健康な女性に比べて、3倍の高い確率で歯が全て喪失してしまうそうです。

(骨粗鬆症患者の下顎の前歯のX線写真。骨が半分失われている。写真:埼玉県・坂田歯科医院のご厚意による。)

炎症性サイトカインのメカニズムより、エストロゲンによるホルモン補充療法で、「歯周病」の症状を軽減させる可能性があります。

また、ホルモン補充療法は更年期以降の骨粗鬆症の予防と治療に使われますので、これが「歯周病」の症状、ひいては歯の喪失も軽減するのではないかと考えられています。

しかし、ホルモン補充療法が口腔に影響を与えていると示している臨床研究では、結果が一貫していないため、2019年に出版されたシステマティックレビューでは結論は出ませんでした。

「歯周病」は複数の因子が関わっているので、多面的に、そして個人差にも合わせて戦略を練る必要がありますね。

西 真紀子

西真紀子

NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)

女性へのメッセージ

日本の国単位の調査では、75歳を過ぎると女性の方が男性より平均の歯の数が少なくなります。 歯や口の清掃状況は女性の方が良いのに! 他の国でも同じ傾向があり、女性の方が歯科治療に真面目に通うからではないかと指摘した研究者がいました。日本でもそれがデータに表れているのかもしれません。 歯科医院に通い続けても、原因を取り除かずに結局歯を失うことになるのなら、時間とお金の使い損ですよね。 しかし、理論上、自分のリスクを調べて弱点を補うような予防歯科をすると、歯を失う主な原因であるむし歯や歯周病を止めることができます。 NPO法人「最先端のむし歯・歯周病予防を要求する会」(PSAP)では、健康に気を遣っておられる方々に、理論的な情報をお伝えしています。 ウェブサイトで「署名」、インスタグラム、フェイスブック、ツイッターで「いいね」「フォロー」してください。皆さんの「健康な歯を保ちたい」という意思を、人数のみ歯科医院に伝え、最先端の予防法導入を後押しします。

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